2007年6月19日火曜日

アフリカの遺産・文化と伝統 African Heritage: Cultures and Traditions

Story 6

African Heritage: Cultures and Traditions

アフリカの遺産・文化と伝統

《文化の担い手はグリオ》

以前にお話しましたように、アフリカの農村に住む人々の80%は読み書きができません。それゆえ口伝えによる伝承がアフリカの文芸の主流です。部族、王国の歴史も口伝えで語られてきました。グリオ(伝統的な歌い手)の仕事は歴史を記録し、次の世代へとつなぐことです。グリオはアフリカの多くの活動のように世襲制になっています。アフリカには、現在、私たちが慣れ親しんでいるような教育訓練形態はありませんでした。そのため家庭とか祭りを司る人たちが、伝統、風習、部族の歴史について、子どもたちや若者たちを指導する役割を担っていました。王や村の長(おさ)の賛辞、動物にまつわるおとぎ話、歴史的英雄の伝説、などなど。女の人たちが歌う歌、格言などの形を通して、長老たちの知恵が受け継がれてきました。

 

《ドラムは楽器ではない》

グリオの仕事はものすごい記憶力を必要とします。アフリカの音楽とダンスはただの娯楽ではありません。社会規則、価値観、達成すべきゴール、歴史などを呼び起こす、それなりの意味が込められている、さまざまな音楽やダンスがあります。そして、使われるアフリカのドラムは音楽だけでなく、お互いの意思の疎通をはかる手段としても用いられるすばらしいものです。ドラムによって村への呼びかけが行われると、村人たちは、すぐに聞き分けることができました。

外国人にとってドラムは音楽しか聞きとれず、ドラムをたたく人の意志や、音が織りなす複雑な意味を聞き逃してしまいました。今の若いアフリカ人や都会に住む若者たちには、ドラムによって伝えられるメッセージを理解できません。急速に近代化してきた都市では、文化遺産が失われつつあります。

アフリカの芸術の隠れた価値が見出されてからは、学者たちは未来にアフリカの遺産を残すため、できるだけ記憶にとどめようとやっきになっています。村々の年長者が亡くなっていくことは、アフリカ文化の滅亡につながっていきます。

今の多くのアフリカの文化は西洋の言葉(英語・フランス語・スペイン語・ポルトガル語)で書かれています。そのためアフリカの特徴が他の言語によっては上手く伝えられずに、省かれる部分ができてしまいます。そのためアフリカ人による文学をキコンゴ語、ズル語、ヨルバ語、リンガラ語、チルバ語、スワヒリ語、ソマリ語などアフリカ固有の言語で書き表す努力が続けられています。日本では独自の文化をもっていたからこそ、りっぱになったのです。アフリカの人たちもこれに気づかなければなりません。今では物質的に富の追求だけの経済発展より、文化の発展のほうがもっと大切なことだと多くの人々はとらえるようになりました。

人形、音楽(ドラムとパーカッション)、お面などが海外に知られているアフリカ芸術の代表的なものです。ミリアム、マケバ、サリア、ケイタ、モリ、カンテなどの多くの才能のあるアーチストたちは世界をまわり、アフリカ人のもつ才能を惜しみなく分け与えています。これは忘れがちなのですが、芸術による表現というのは、そのもののもつ美と実利の面だけで作り出されたものではないことです。アフリカの芸術形態は神と先祖と、今を生きている人たちを結ぶ神聖な意味が込められていました。大切なことは、それぞれの芸術作品がほんとうの芸術品なので、ひとつとして同じ形のものがないことに気づくことです。アフリカのアーチストたちは大量生産を奨励していませんでした。

 

《重要な仮面の役割》

仮面は多くの村々での生活のなかで特別な機会にだけ使われています。現在でもそうです。仮面の大きさや形は、その役割によりさまざまです。グリオ(かたりべ)の仮面、お願いの仮面、スパイの仮面、知恵の仮面、戦争の仮面などがありました。これらの仮面自体に大きな力が秘められていると考えられていました。その理由は仮面をつけることで神に近づくことも可能で、そのためひどく恐れられて敬われていました。

アフリカの村々に伝えられる仮面はすべて口が開いています。その開いた口から神様や先祖からのメッセージが、この現世の人たちに伝えられるということになるのです。だから仮面をつける人は、そのメッセンジャーとしての役目を果たし、仮面がその人に特別な力を与えることになると考えられているので、仮面の扱いは恐れられ、敬われて、伝統と秩序を保つ大切な社会的機能を果たしていました。

仮面をつける人たちは、もちろん、きびしい訓練をくぐり抜けてきた人たちでした。悪魔を退治したり、たくさん収穫ができますようにと祈り、また病気が早くなおりますようにと先祖や神様にお願いしました。仮面はいつもドラムといっしょに用いられました。

アフリカの芸術を理解するためには、それを生み出した社会規範に対する知識を持つことです。アフリカの人のほとんどは見えない世界と生活を別々にとらえていません。私を含めてですが、人は死んで私たちの目には触れないのですが、この世界でのできごとに積極的に運営・参加していると信じています。

だから仮面は重要なのです。アフリカの人たちは見えない世界の重要性を認識しています。見えない世界からの意志を代表して仮面がこの世とのコミュニケーションの役目を果たしていると考えられています。そのために仮面は尊敬され大切に扱われています。(次号に続く)

 

By チロンボ・ンゴイ Jr

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